これは、地主様の相続対策において非常に重要なテーマです。
先代から「相続税の納税のためには、駐車場を2物件売却するように」と言われていた地主様からご相談をいただきました。
一見すると、先代の方針どおりに駐車場を売却すれば納税資金は確保できるように見えます。
しかし、不動産を売却する際に大切なのは、単に「どの不動産を売れば納税できるか」だけではありません。
- 売却後の収入がどう変わるのか。
- 将来、管理負担や権利関係の問題が残らないか。
- 次世代にとって持ち続けるべき不動産なのか。
こうした点を総合的に確認したうえで、売却する不動産を選ぶ必要があります。

本件では、当初は駐車場物件の売却が前提となっていました。
しかし、所有不動産をすべて確認したところ、駐車場を2物件売却しなくても、納税資金を確保できる可能性があることが分かりました。
検討したのは、駐車場1物件の売却と、貸宅地の一部整理です。
貸宅地は、地主様が土地を所有し、その土地上に借地人が建物を所有している不動産です。
地代収入はあるものの、底地単独では市場性が限定されやすく、借地人との関係調整や将来の承継に課題を残しやすい不動産でもあります。
そのため、本件では「収益性のある駐車場をすべて手放す」のではなく、「将来的な負担が大きい貸宅地を優先して整理する」方針を検討しました。
貸宅地6件のうち、3件売却できれば納税可能
試算の結果、貸宅地6件のうち3件を借地人へ売却できれば、相続税の納税資金を確保できる見込みとなりました。
貸宅地の整理では、第三者に売却するよりも、借地人に底地を購入してもらう方法が有力な選択肢になります。
借地人にとっては、底地を取得することで土地と建物の権利関係が一本化され、将来の建替え・売却・相続がしやすくなります。
地主様にとっても、貸宅地特有の管理負担や将来の交渉リスクを減らしながら、納税資金を確保できるメリットがあります。
そこで、各借地人の意向を確認し、底地購入の可能性を丁寧に探っていきました。
結果として、6件中4件を借地人へ売却
交渉の結果、貸宅地6件のうち4件を借地人へ売却することができました。
さらに、1件については同時売却の形で整理が進み、最終的に相続税の納税資金を確保することができました。
当初は「駐車場2物件を売却するしかない」と考えられていた案件でしたが、全体を確認し直したことで、駐車場の売却は1物件に抑えることができました。
結果として、納税資金を確保しながら、今後の収入減少も最小限に抑えることができました。
貸宅地を持ち続けるデメリット
貸宅地は、相続税評価上は一定の評価減が反映される一方で、実際の資産整理の場面では注意が必要です。
底地だけを第三者に売却しようとしても買い手が限られやすく、価格も伸びにくい傾向があります。
また、借地人との関係が⾧期にわたるため、地代改定、更新、建替え、譲渡承諾、相続発生時の連絡調整など、次世代に管理負担が残ることもあります。
特に、相続人が不動産管理に慣れていない場合、貸宅地をそのまま承継することは、将来の負担やトラブルの原因になりかねません。
本件の地主様も、貸宅地を持ち続けることの負担を認識されていたため、納税資金の確保と同時に、将来の権利関係を整理できたことに大変満足されていました。
売却は「納税できればよい」ではなく、残す資産まで考える
相続税の納税資金を確保するための売却では、どうしても「早く売れる不動産」「価格が出やすい不動産」から売却を考えがちです。
しかし、収益性のある不動産を安易に売却してしまうと、納税後の収入基盤が弱くなることがあります。
一方で、管理負担が大きく、将来の換金性にも課題がある不動産を整理できれば、納税資金の確保だけでなく、次世代への承継対策にもつながります。
本件では、駐車場を1物件残すことができたため、売却後の収入減を抑えることができました。
また、貸宅地を複数整理できたことで、将来の借地人対応や権利関係の煩わしさも大きく軽減されました。
相続不動産の売却は、全体設計が重要です
相続税納税のための不動産売却では、個別の不動産だけを見るのではなく、所有資産全体を見て判断することが重要です。
- どの不動産を売却するのか。
- どの不動産を残すのか。
- 売却後の収入はどうなるのか。
- 次世代に負担を残さないか。
この整理を行うことで、納税資金の確保と資産承継の両立が可能になります。
税務判断や相続税申告は税理士の先生が担い、当社は現地調査、権利関係の整理、価格検証、売却実務を通じて、納税資金確保の選択肢を具体化します。
相続税の納税資金をどの不動産で確保するかお悩みの方は、早めにご相談ください。
